ヴァーチャル時代の実態に対応できていない日本の意匠法。
早急な改正が望まれます。
弁理士の富田です。
日本には、デザインを保護する法律があります。『意匠法』と呼ばれる法律です。
工業技術やIT技術などに関するアイデアは、特許制度で保護されますが、
物の外観や形状などのデザインは、意匠制度で保護されます。
つまり、意匠法とは、デザインに関する特許を規定した法律です。
今日は、この意匠法による画面デザインの保護に関する話題です。
最近、弊所では、スマホやタブレット端末の『アプリ』に関連した画面デザインについて、
「どうにかこの画面デザインを保護できないか」といったご相談をいただくことが多くなる傾向にあります。
このような画面デザインを保護する法律としては、
はじめに書いた『意匠法』のほか、表現物を保護する『著作権法』が知られています。
後者の著作権法に基づく権利侵害(著作権侵害)を立証するためには、
その相手方が、保護対象となるデザインを『模倣した』こと、つまり『偶然ではなく意図的にマネをした』という事実を立証しなければなりません。
ところが、この侵害事実の立証(摸倣の立証)は必ずしも容易ではないことから、
著作権法による画面デザインの保護は、実質的に期待できるものとはいえません。
そこで次に、先に述べた『意匠法』による保護の検討になるわけですが、
残念ながら、わが国では、意匠法で保護される画面デザインは、スマホやタブレットにはじめから組み込まれているソフトウェアに関する画面デザインに限定されます。
例えば、iPhoneやiPadのホーム画面のデザインは、意匠法の保護対象となっており、意匠登録することが可能です。
これに対し、(事後的に端末にインストールされる)アプリの画面デザインは、意匠法による保護対象から除外されているため、わが国では意匠登録できないのです。
ところが、ヨーロッパなどの諸外国では、事後的にインストールされるアプリの画面デザインは、
グラフィック・シンボルやユーザ・インターフェースに関するデザインとして意匠法の保護対象に含まれています。
そうすると、現状では、
諸外国では『アプリの画面デザイン』が意匠法で積極的に保護される一方、
わが国では同様のデザインが意匠法の保護対象から除外されているといったことになるため、
わが国と諸外国との間で画面デザインの保護について格差が生じていることになります。
アプリの画面デザインは、その機能性に密接に関連し、アプリのダウンロード件数にも大きく影響しますから、
有体物のデザインと同様に意匠登録により積極的に保護できるように、意匠法の早急な改正が望まれるところであります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
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