弁理士の富田です。
今日は、特許出願をした後で『発明者』を追加できるのか、という問題について解説します。
特許出願の仕事をしていますと、
企業の知財部から『出願済みの件に発明者を追加したいのですが、どうすれば…』
といった相談を受けることがあります。
なぜこの点が問題になるかといいますと、
特許庁は、特許出願の願書の『発明者』欄を自由に補正することを認めていません。
特許出願の手続きを完了した後で、その申請書類に『発明者』を追加するには、
以下の条件を満たす書面を提出する必要があります。
① 発明者を追加する理由を記載した書面
② 発明者相互の宣誓書(変更前のもとの発明者と追加する発明者の『全員分』の宣誓書)
条件①は簡単です。
極端にいえば、適当なことを書けばよいわけです。
条件②の方は少々問題があります。
一見すると簡単に思えますが、
発明者が何十人もいるときは、宣誓(=押印)を集めるのはかなり大変なわけです。
めったにありませんが、発明者が何十人もいたら、かなり時間がかかります。
また、発明者のうち、たとえ一人でも行方不明だったり、宣誓(=押印)を拒否すれば、発明者の追加はできなくなります。
さらに、5社、6社、あるいはそれ以上の複数企業の共同特許出願では、
複数会社の発明者全員の宣誓(=押印)を集めるとなると、会社の稟議が通らないこともあり得ます。
大人の事情で…。
ですから、複数法人が共同で特許出願した場合には、
発明者全員が押印した宣誓書を用意することができず、
補正による『発明者』の追加が難しいときがあります。
でも、そのような場合には、
『国内優先権主張』を利用してあらためて特許出願するという裏技があります。
この方法であれば、面倒な補正書や宣誓書の提出は一切不要で、
特許出願の願書にはじめから『真の発明者』を記載することもできます。
さらに、国内優先権主張を利用するので、実質的に、出願日が繰り下がることもありません。
上述した発明者全員の宣誓書が集めらなかったり、発明者の追加で困ったときには、
是非今日の話を思い出してください。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
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富田国際特許事務所
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