特許申請での図面の重要性。新規事項追加の拒絶理由を回避するために。
弁理士の富田です。
特許申請において図面は必須の添付書類ではありませんが、
まったく無いよりも、あった方が良いのは言うまでもありません。
その方が発明の理解が容易だからです。
しかし、特許権を取得する上で、図面には他にも重要な意味があります。
将来の補正において、新規事項追加の拒絶理由(特許法17条の2違反)を避けるためです。
特許申請すると、ほとんどの特許出願が
それまでに公開された特許文献に開示されているとの理由で
拒絶理由通知(新規性違反・進歩性違反の拒絶理由)を受けることになります。
この拒絶理由を解消し権利化に導くために、
多くのケースにおいて申請書類を補正(修正)することになりますが、
その際、拒絶の根拠となった従来技術との差異を明確にするために
やむを得ず、申請当初の書類に記載されていない文章表現を用いて
書類を補正することがあります。
しかし、「申請当初の書類に記載されていない文章表現」を
事後的に新たに書き加える補正は、原則として容認されません。
つまり、特許申請時の最初の書類に書いていない事項は、
申請した後で書き加えることができないのです。
ところが、
その「申請当初の書類に記載されていない文章表現」の態様や様子が
図面にハッキリと描かれていて、且つ、誰が見てもそのようにしか見えない場合には、
その書き加える文章が、実質的に申請当初の書類に記載されているとして、
その補正は容認されることになります。
特許申請する発明の特徴を『あらゆる表現で』漏れなく記載することは
現実的に無理なわけですが、
図面中に発明の特徴を描いておくことで、
その図面に基づいて、新たな文章表現を書き起こすことが可能になります。
したがって、特許申請する際には、
秘匿すべきノウハウなどを必要以上に開示しない範囲で、
発明の外観上の特徴や構成、動きなどを図面に具体的に描いておくことが大切であると言えます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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