AIと不動産市場の未来:特許7308370号の分析
弁理士の富田です。
今回は、AIを用いたビジネス関連発明の特許の紹介です。
権利番号:特許7308370号
登録日:2023/07/05
発明の名称:予測装置及びプログラム
この特許権の請求項1の内容は以下のとおりです。
(特許7308370号の特許公報より引用)
【請求項1】
住居に関する一般情報を取得する一般情報取得部と、
前記住居に対応するライフラインに関する情報を取得するライフライン情報取得部と、
前記一般情報と前記ライフラインに関する情報と、前記住居が持ち家か否かを示す情報とを教師データとして機械学習させることにより、前記住居が持ち家か否かを予測する持ち家予測部と、
を備える予測装置。
不動産業界は、技術革新によって変貌しつつあります。
今日は、この変化の最前線に立つ一例として、
特許7308370号「予測装置及びプログラム」について深掘りします。
【特許の概要】
この特許は、不動産業界における営業効率の向上を目的としています。
具体的には、顧客が居住する物件が「持ち家」であるか否かを予測するAI技術に関連するものです。
この予測装置は、一般情報取得部とライフライン情報取得部から成り、機械学習を用いて持ち家か否かを判断します。
【技術の鍵】
このAI技術の核心は、「持ち家予測部」にあります。
予測モデルは、
・ライフライン情報(水道、ガス、電気の使用状況等)と
・一般情報(インターネット上の分譲マンション情報等)を
組み合わせ、教師データとして機械学習させます。
これにより、顧客の居住する物件が持ち家である可能性を高精度で予測することが可能になります。
【営業効率の革新】
この特許が不動産業界にもたらす最大のメリットは、営業効率の大幅な向上です。
持ち家である顧客をターゲットにすることで、不動産会社はより戦略的な営業活動を展開することができます。
賃貸物件を排除し、持ち家のみを対象とすることで、営業リソースを最適化し、成功率を高めることが可能です。
【特許の詳細】
本特許では、特許請求の範囲において「機械学習」のプロセスの詳細については述べられていませんが、
その実装に関する詳細は発明の説明部分に記載されています。
この透明性が、特許査定をストレートに受ける要因となりました。
【まとめ】
特許7308370号は、不動産業界におけるAI技術の活用方法を示す鮮明な例です。
機械学習を用いた予測モデルは、不動産会社が持ち家を持つ顧客に対してより効率的にアプローチするための新しい道を切り開いています。この技術革新は、業界の将来に大きな影響を与えることでしょう。
不動産とテクノロジーの交差点で起こる革新に、今後も注目していきます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
富田国際特許事務所
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