弁理士の富田です。
今から10年以上も前のこと、たしか2000年頃だったと思いますが、
ビジネスモデル特許がブームになったときがありました。
そして、このビジネスモデル特許ブームを更に過熱させるきっかけの一つとなったのが、
『婚礼引き出物の贈呈方法』に関する特許(特許第3023658号)でした。
ビジネスモデル特許というのは、
単なる『人為的な取り決め』だけでは成立せず、
通常は、IT技術を利用していることが権利化の前提となります。
特許の対象となるアイデアは『自然法則を利用した技術的思想の創作』でなければならないからです。
つまり、自然法則を利用していない、単なる『人為的な取り決め』は、
発明ではなく、特許の対象とはなりえません。
ところが、上述した『婚礼引き出物の贈呈方法』特許は、
自然法則を利用しているとは言い難い『人為的な取り決め』が主たる構成要件となっているにも関わらず、
特許権として成立しました。(ただし、その後の異議申立により取消処分となりました。)
この特許権の成立後は、
ビジネスモデル特許について誤解を招く報道などの影響もあって、
実質的に『人為的な取り決め』からなるビジネス方法についての特許相談を増えることとなり、
今だにそういった誤解に基づく相談が寄せられることが多くあります。
まず皆さんに知っていただきたいのは、
単なる『人為的な取り決め』は、発明ではなく、特許の対象にならないということ。
つまり、特許の対象となる『ビジネスモデル』というのは、
あくまでもIT技術を利用している必要があります。
具体的にいえば、
サーバー装置などのブロック図(例えばCPUやメモリなどを含むシステム構成図)を書くとともに、
この装置がどのような演算処理を行って目的を達成するのかを、
フローチャートなどを使ってアルゴリズムを明確にする必要があります。
そして、
そのアルゴリズムが全体として『人為的な取り決め』で構成されている場合には、
特許の対象ではないということになります。
なお、フローチャート中の1ステップに人間の行為(人為的な取り決め)を記載することは許されないわけではありません。
そのような人間の行為に関する記載を一部に含む場合であっても、発明全体としてみたときに、
『自然法則を利用した技術思想である(単なる人為的な取り決めではない)』といえる程度にまで、
・ソフトウェアによる情報処理の内容、
・当該情報処理でハードウェアをどう用いるのか、
を具体的に記載していれば、特許の対象となる発明に該当するといえます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
富田国際特許事務所
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