弁理士の富田です。
現行の実用新案制度では、実用新案登録を申請すると、
形式的要件のみが審査され、実体的要件(発明の新規性や進歩性など)については審査されないため、
特許申請に比べて低コストで早期に権利(実用新案権)を取得することができます。
一方、実用新案権に基づいて、差止請求や損害賠償請求などの権利行使をする場合には、
あらかじめ『実用新案技術評価書』を侵害被疑者に提示して警告すべきことが法律で定められています。
つまり、実用新案権の場合、侵害被疑者に対して権利行使するためには、あらかじめ特許庁に実用新案技術評価を申請し、お墨付き(新規性や進歩性の要件を満たしているという肯定的評価)をもらう必要があるのです。この点が特許権に基づく権利行使と大きく異なるところです。
実用新案技術評価書には、下記のサンプルに例示されるように、
実用新案権に係る考案の新規性や進歩性などに関する評価が記載されます。
ここでいう『評価』とは、公知技術と比較して新規性や進歩性が認められるか否かについての評価になります。
多くの場合、実用新案技術評価書の評価内容は、否定的評価(新規性や進歩性が無い旨の評価)となります。
否定的評価の場合の実用新案技術評価書の内容は、特許出願に対する拒絶理由通知の内容と同様のものとなるといえるでしょう。
なお、実用新案技術評価書において否定的評価が記載されていた場合の対応措置としては、
実用新案の権利内容を訂正することが挙げられます。
権利範囲を減縮訂正することで否定的評価を覆すことが可能な場合には、有効な措置といえるでしょう。
最後に、他人の実用新案権に関する技術評価書を見る方法(閲覧する方法)についてですが、
残念ながら現在のところ、ネット上の電子図書館でその内容を無料で閲覧することはできません。
特許庁に対して『ファイル記録事項の閲覧(縦覧)請求書』を提出して、閲覧を申し込む必要があります(印紙代600円)。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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