弁理士の富田です。
さて、特許申請の書類には、特許権の権利範囲(つまり権利の外縁)を特定するために、
『特許請求の範囲』と称される欄に、権利対象となる発明の特徴を記載します。
この特許請求の範囲が、特許権の強さや権利範囲の広さを決定づける最も重要な記載となります。
ところが、この特許請求の範囲というのは、独特の書き方で記載されているため、
特許に不慣れな方にとって非常に読み難いものであり、また、
多くの場合、複雑な記載となっているため、一読しただけでその意味内容を把握することは必ずしも容易ではありません。
一方、下記に掲げる『揚げ出し卵豆腐』に関する特許権の特許請求の範囲は、
数多くの特許権のなかでも珍しい、単純明快な一行書きの記載であって、誰でも容易にその意味内容を理解することができます。
【請求項1】卵豆腐を油で揚げてなる揚げ出し卵豆腐。
この特許権の主な内容は、上記【請求項1】に記載のとおりです。
つまり、経済活動において、卵豆腐を油で揚げて「揚げ出し卵豆腐」を作ると、特許権を侵害することになるわけです。
居酒屋であろうが弁当屋であろうが、とにかく、特許権者の許諾無しで業務において「揚げ出し卵豆腐」を作ることは許されないわけです。
特許権の強さや権利範囲の広さは、
一般的に、特許請求の範囲(請求項)の記載の『簡潔さ』と相関関係があると考えられますから、
特許請求の範囲の作成にあたっては、明確さを保ちつつ、可能な限り簡潔に記載することが好ましいといえるでしょう。
その意味で、『揚げ出し卵豆腐』特許における特許請求の範囲の書き方は、簡潔であり、理想的なものと考えられます。
なお、この特許権は平成24年に消滅したので、
今日現在では、誰でも自由に「揚げ出し卵豆腐」を作ることができます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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