『物』の発明を製法で特定した場合の権利解釈(その2)

photo credit: kevin dooley via photopin cc

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弁理士の富田です。

さて、前回の記事では、『構成要件が製法で特定された物の発明』に係る請求項、つまり、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利解釈には、「製法限定説」と「物質同一説」の2つの考え方があると説明しました。

今日は、前者の「製法限定説」を採用した判例を紹介したいと思います。

 

まず、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム形式で登録された特許権の具体例としては、
下記特許に記載の請求項1が挙げられます。

================================================
【特許番号】特許第1547537号
【発明の名称】抗真菌外用剤
【請求項1】xxxの1種もしくは2種以上からなる溶液を外用基剤で製剤化してなる抗真菌外用剤。
(請求項1の前半を省略)
================================================
この特許権に関する抗真菌外用剤事件(東京高裁平成9年(ネ)5702号)では、「製法限定説」が採用されています。
裁判所は、この「製法限定説」を採用する理由として次の点を判示しています。(かなり要約してます。)

 

  • 本件特許は、請求項に記載の特定のプロセス(工程)に新規性・進歩性が認められて登録に至ったものであるから、
    登録後に、特許権者がこれに反する主張をすることは、禁反言の原則に照らし許されない 
  • 特許請求の範囲に特定のプロセス(工程)が記載されているのに、
    権利範囲の解釈においてこれを無視するとすれば、特許法70条の規定に反することになり
    特許権者に対して期待以上の広い保護を与える一方、当業者に対し予測しない不利益を与えることとなる。

つまり、禁反言の原則と特許法70条を根拠にして、
権利範囲の外縁の確定にあたって『プロセス(工程)』を考慮に入れるべきものと判断しているといえます。

 

なお、プロダクト・バイ・プロセス・クレームが関連する最近の判例において、
上記のような「製法限定説」を採用するものは少数であり、
そのほとんどは「物質同一説」の方を採用しているといえます

次回は、その「物質同一説」を採用した判例を紹介したいと思います。

本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

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〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
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