駆逐された哀れなビジネスモデル特許たち / 第2回 『メールマガジン連携アフィリエイト方法』

12.14


ビジネス関連発明、通称『ビジネスモデル特許』。
特許庁での正式名称は『コンピュータ・ソフトウェア関連発明』。
この分野の特許出願の登録率は他の技術分野の発明と比較して低いが、その事実はあまり知られていない。

このシリーズでは、特許庁の審査で拒絶処分となった、数多くの哀れなビジネスモデル特許たちを紹介し、その原因を分析する。
今回はその第2回である。

 

弁理士の富田です。

 

ウェブサイトを利用した広告収入の手段である『アフィリエイト』。
いまでは一般的に知られた用語ですが、日本の特許申請ではじめて登場したのは2000年のことでした。

 

本日紹介する駆逐されたビジネスモデル特許は、
この『アフィリエイト』という用語を、日本ではじめて特許申請で用いたビジネスモデル特許です。

 

発明の名称:メールマガジン連携アフィリエイト方法、出願日:2000年1月24日、特許出願人:株式会社東急百貨店。

その概要は、
メルマガにアフィリエイト広告を掲載し、その広告経由での販売実績に応じた手数料を、メルマガ発行者に支払う
といった内容です。

今では当たり前となった、メルマガとアフィリエイトの連携ですが、
2000年の当時では、斬新なビジネスアイデアだったのでしょう。

 

その特許申請の主たる内容は次の通りです。(申請内容の全文PDFはコチラ。)

 

【請求項1】
・メールマガジン発行者が編集したメールマガジンに、ネットワーク上のショッピングサイトの広告を挿入する段階と、
・前記ネットワークを介して、前記広告が挿入されたメールマガジンを読者に配信する段階と、
・前記読者からの前記広告を経由した前記ショッピングサイトへのアクセスを受け付け、前記ショッピングサイトでの前記アクセスに対応した販売実績を記録する段階と、
・前記メールマガジンごとの前記販売実績に応じて、該当するメールマガジン発行者に対して手数料を支払う段階と、
を有するメールマガジン連携アフィリエイト方法。

 

特許出願というのは、
特許庁に申請書類を提出しただけでは、その内容について審査を受けることができず、
特許出願の手続きとは別に、出願日から3年以内に『審査請求』という手続きを行う必要があります
この審査請求をしなかった場合、特許出願は取下処分となります。

 

今回紹介する 『メールマガジン連携アフィリエイト方法』のビジネスモデル特許出願は、
この審査請求が行われなかっため、取下処分となりました。
つまり、戦わずして葬り去られた特許出願となったわけです。

 

では、仮に審査請求をした場合、
このビジネスモデル特許は、権利化された可能性はあったでしょうか。
間違いなく拒絶されていたことでしょう。

 

このビジネスモデル特許のアイデアは、たしかに2000年当時のレベルを考えれば斬新なわけですが、
特許権の権利範囲を決定付ける『請求項』の記載に問題があったといえます。

 

上記申請内容の【請求項1】において、
・『メールマガジンにアフィリエイト広告を挿入する段階』と、
・『メールマガジン発行者に対して手数料を支払う段階』は、
人間の行為を含みうる書き方であり、
必ずしも、コンピュータ・ソフトウェアによる情報処理によって実現されているとは断定できません。

 

ということは、
このビジネスモデル特許は、『広告のコピペ』や『金銭の支払い』といった人間の取り決めそのもについて、
特許権の取得を申請していることになるので、
特許制度の保護対象である『技術的なアイデア』に該当しないことになります。

 

よって、仮に特許庁で審査を受けていたとしても、
特許制度の保護対象である技術的な発明に該当しないとして、最終拒絶されたことでしょう。

 

ビジネスモデル特許の権利化にあたっては、
コンピュータによる情報処理の視点から特徴を記載することが重要となります。

 

本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ コンピュータハードウェア、ナビゲーションシステム、メカトロニクス、医療機器、内視鏡、ビジネスモデル、土木技術、掘削装置などの特許技術を担当。
■ 特許の権利化業務では、国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

【富田弁理士への問い合わせ先】
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
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