弁理士の富田です。
さて、特許法では、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、特許を受けることができないと規定しているわけですが(特許法32条)、殺傷や破壊を目的とする『兵器』について特許を受けることはできるのでしょうか。今日はこの点について解説したいと思います。
兵器には色々な種類のものがあるわけですが、
代表例としては、ピストル、ミサイル、大きなものでは潜水艦といったものが挙げられます。
これらの兵器の多くは、殺傷や破壊を主目的とする道具ですから、
そのような殺傷・破壊兵器について独占権たる特許権を与えることは道徳に反するようにも思えます。
しかし、特許法の目的というのは、技術の進歩と産業の発達に寄与することにありますから、
殺傷・破壊兵器にも積極的に特許権を与えることで、防衛産業や兵器産業の発達が期待できるわけです。
そこで、日本の特許法では、ピストル、ミサイル、潜水艦といった各種兵器にも、特許権を与えることを認めています。
下記は日本で特許が与えられた兵器発明の一例です。
なお、米国では、安全保障上の理由から、軍事技術に関する特許申請の内容を非公開とする制度がありますが、
日本には、そのような国防技術に関する特許を非公開とする制度は導入されていません。
したがって、わが国では、防衛省のほか三菱重工や川崎重工といった兵器関連企業が、国防に関する技術について日本特許庁に多数の特許を申請しているわけですが、これらの国産防衛技術に関する特許申請の内容は、申請してから一定期間の経過後に公のもとに曝され、日本国内は勿論のこと他国からも見放題の状況となるわけです。
このような国防に関する特許出願については、わが国の安全保障上、その内容を秘密にすることが望まれますが、残念ながら、現在のところそのような非公開制度の採用には至っていません。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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