企業が注意すべき『デザイン』に関する権利帰属
弁理士の富田です。
さて、日本においてデザインを保護する法律には、
・著作権法
・意匠法
の2つの法律があります。
著作権法では、
思想や感情の表現物である『デザイン』が
美術の著作物として保護されます。
一方、意匠法では、
物品の外観や形状、あるいはスマホの操作画面などの『デザイン』が
登録を条件として、法的に保護されます。
今日は、この著作物に関する権利と、意匠に関する権利が、
はじめに『誰に』帰属するのかについて解説したいと思います。
例えば『スマホの操作画面』に関するデザインを、
企業の従業員が創作した場合について考えてみます。
著作権法では、一定の要件のもと、その企業が著作者となるので(著作権法15条1項)、
その場合、『スマホの操作画面』に関する著作権は、
従業員ではなく、はじめから企業に帰属することになります。
つまり、画面デザインの完成と同時に、一定の要件のもと、企業が著作権を取得することになるわけです。
一方、意匠法では、デザインを創作した従業員が創作者となり(意匠法3条1項柱書)、
『スマホの操作画面』に関する意匠登録を受ける権利は、原則として、
はじめに、企業ではなく、従業員側に帰属することになります。
つまり、企業は、その従業員から『意匠登録を受ける権利』を譲り受けない限り、
意匠登録出願を行うことができず、また、意匠権の権利者になることもできないわけです。
そうすると、企業の従業員が創作したデザインの権利帰属について、
企業側が何ら措置(権利譲渡など)を講じない場合には、
その企業は、『著作権』を所有できても、『意匠権』を取得することはできません。
仮に、従業員から『意匠登録を受ける権利』を譲り受けることなく、
意匠登録出願し、意匠権を取得した場合には、
無権利を理由に従業員(又はもと従業員)から意匠登録無効審判を請求される虞があります。
このように、著作権法と意匠法では、権利の帰属に関する考え方が異なっており、
意匠法では、創作者個人(従業員)の権利が尊重されることに留意する必要があります。
したがって、近年争いが多発している『発明』についての権利と同様に、
デザインに関する権利(意匠登録を受ける権利)についても、就業規則や個別の譲渡契約などにより、
企業と従業員との間で権利関係を調整し、争いを未然に防ぐことが重要であるといえます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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