コピー業者が書籍などの著作物の複製を拒む理由
弁理士の富田です。
都心部やその周辺地域などでは、
コピーサービスなどを専門に扱う、いわゆる『コピー業者』をよく見かけます。
代表的なものでは『キンコーズ』がありますね。
この類のコピー業者に、書籍を持っていって「まるごとコピーして」と頼んでも、
著作権法がどうのこうの…といったことを言われ、基本的に断られるようになっています。
なぜなのか。
この点については、
著作権法30条をよく理解する必要があります。
著作権法30条(私的使用のための複製):
著作物は、
個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において
使用することを目的とするときは、…
その使用する者が
複製することができる。
上記の著作権法30条によれば、
書籍などの著作物は、いわゆる『私的使用』を目的とするときは、
その著作物を複製できることとされています。
ただし以下の点に注意する必要があります。
この条文でポイントとなるのは、
『その使用する者が複製することができる。』
という部分です。
ここでいう『使用する者』とは、
使用者自身が自分で複製することを要求する趣旨です。
したがって、使用者でないコピー業者は、
使用者に代わってコピーすることができないわけです。
もっとも、この『使用する者』には、
使用者の支配下にあり、且つ、実質的に使用者の手足として行動する者が含まれます。
具体例を挙げますと、
会社の社長が秘書にコピーをとってもらうというのは、
形式的には、『使用する者』による複製に該当しないように思われますが、
法律的には、『使用する者』による複製に該当するので、
著作物の複製が法的に許されることとなります。
ちなみに、コピー業者は、
使用者の手足として行動するかもしれませんが、
使用者の支配下にあるとはいえないので、
『使用する者』に該当しないこととなります。
以上のような理由で、
キンコーズなどのコピー業者は、法令遵守の観点から
書籍などの著作物の複製を拒むことになります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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