偽名での特許・商標申請:隠れたリスクと正しい対処法
特許申請や商標申請は、イノベーションと創造性を保護し、事業の核心を守る重要なプロセスです。これらの申請において、出願人(権利者)の情報は極めて重要であり、正確な記載が求められます。しかし、実務上、諸事情により偽名での申請が行われる場合がありますが、これには大きなリスクが伴います。
令和4年以降、特許や商標の権利名義を正しい氏名や会社名に変更する際には、譲渡人の実印と印鑑証明が必須となりました。この変更により、実在しない人物の名義で申請された場合、名義変更が事実上不可能となります。なぜなら、実在しない者の印鑑証明を用意することが不可能であるためです。
さらに重要な点として、実在しない者は訴訟を行うことができません。これは、特許や商標の権利侵害が発生した場合、権利者が裁判を通じて権利を行使できないことを意味します。このように、偽名での申請は、将来的に権利行使において大きな障壁となり得ます。
ただし、申請後~権利登録前の段階であれば、「誤記の訂正」によって出願人の情報を訂正することが可能な場合もあります。これには、誤記があった理由を明確に記述する必要がありますが、このプロセスを利用することで、一部の問題を解決できる可能性もあります。
結論として、特許申請や商標申請においては、偽名を使用することは避けるべきです。実在する人物や法人の名義で正しく申請することが、将来的な権利行使や名義変更において重大なトラブルを避ける上で極めて重要です。
もし自己の名義で申請できない特別な事情がある場合でも、実印や印鑑証明を用意可能な他人名義(例えば家族名義など)での申請は検討できますが、これはあくまで例外的な対応であり、原則としては避けるべきであることを心に留めておくべきです。
特許や商標は、あなたの創造性とイノベーションを守るための重要な手段です。その価値を正しく理解し、適切な手続きを踏むことが、事業の成功への鍵となります。
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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富田国際特許事務所
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