『物』の発明を製法で特定した場合の権利解釈(その1)

photo credit: Joe Gratz via photopin cc

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弁理士の富田です。

さて、前回は、『物』の発明を製法で特定した場合の審査上の取り扱いについて解説しました。
今日は、そのような発明(製法で特定された物の発明)が権利化された場合の権利範囲の解釈について書きたいと思います。

このように『構成要件が製法で特定された物の発明』に係る請求項を、業界用語で、プロダクト・バイ・プロセス・クレームと称するわけですが、このプロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利解釈については、日本のこれまでの判例では次の2つの考え方が示されています。

 

物質同一説

プロダクト・バイ・プロセス・クレーム形式で権利化された発明は、製法発明ではなく、あくまでも『物』の発明である。
そして、その権利範囲の解釈にあたっては、請求項に記載の当該製法に限定して解釈すべきではなく
たとえ『製法』が異なっていても『物』として同一であれば、特許権を侵害するとする考え方。

したがって、この考え方に基づく場合、
特許権侵害の判断において、請求項に記載の『製法(プロセス)』が一致するか否かは問題とはならず、
『物(プロダクト)』として同一であれば、特許権侵害が成立することになります。

 

製法限定説

発明を特定するための構成要件として製法が記載されているので、
『物』として同一であるとともに、『製法』も一致する場合に限って、特許権を侵害するとの考え方。

したがって、この考え方に基づく場合、
『物(プロダクト)』として同一であっても、発明の構成要件である『製法(プロセス)』が異なるときには、
特許権侵害は成立しないことになります。

 

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関するこれまでの判例の傾向としては、前者の「物質同一説」に基づいて判断しているものが多いと考えられます。
その主な理由としては、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム形式で記載された特許請求の範囲は、
前回解説したとおり、特許性の判断において(つまり審査の段階において)原則として製法の違いは考慮されないので、
権利化後の権利解釈においても製法を考慮すべきでないと考えられるからです。

次回からは、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利解釈に関する判例を紹介したいと思います。

本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

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〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
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