営業秘密の『秘密管理性』の要件

弁理士の富田です。

さて、以前の記事で、『従業員(又は元従業員)による営業秘密の漏えい』を予防するための対策について解説しました。

そのときの記事で、『従業員(又は元従業員)による営業秘密の漏えい』について、
不正競争防止法に基づく権利行使が認められるためには、
次の3要件を満たす必要があるとお話ししました。

 ① 当該情報が秘密として管理されていること。(秘密管理性)
 ② 当該情報が事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること。(有用性)
 ③ 当該情報が公然と知られていないこと。(非公知性)

このなかで、最も重要なのが、①の『秘密管理性』になります。

では、どの程度の管理がなされていれば営業秘密として認められるのでしょうか。

判例によれば、『秘密管理性』の要件を満たすには

第一に、
当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしている、ことが必要です。

第二に、
当該情報にアクセスできる者が限定されていることが必要です。

したがって、顧客名簿などの重要な営業秘密が、事務机の上に他の書類と一緒に積み上げられ置かれていたり、
営業秘密をなすパソコンデータにパスワードが付されず、誰でも自由に閲覧できる状態に置かれている場合には、
当該情報は、『秘密管理性』の要件を満たさないことになります。

『秘密管理性』の要件を満たさない場合には、
もと従業員等による営業秘密(例えば顧客名簿など)の使用や開示に対して、
不正競争防止法に基づく権利行使が認められません。

なお、『秘密管理性』の要件を満たし得る典型的なケースとしては、
書類中に『機密』や『社外秘』などの記載やスタンプがある場合や、
当該情報にアクセスできる者が社内規則によって限定されている場合
などが具体例として挙げられます。

この機会に社内での『営業秘密』の取り扱いについて検討されてみてはいかがでしょうか。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

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