住宅や橋梁などの建築物の外観、つまり建築デザインを、法的に保護することは可能なのか。
弁理士の富田です。
住宅や橋梁などの建築物のデザインは、法的保護を受けることは可能なのでしょうか。
今日は、この点について検討してみたいと思います。
まず、意匠法による保護について。
意匠法とは、物の形状やデザインを保護する法律です。
言い換えれば、形状特許あるいはデザイン・パテントといった性格のものになります。
このように意匠法は物のデザインを保護する法律ですから、
意匠法によって建築デザインが保護されるようにも思われます。
しかしながら、意匠法では、不動産(土地の定着物)に関するデザインは、
保護対象から除外されています。
したがって、住宅や橋梁などの建築物のデザインは、そもそも意匠登録することができないため、
意匠法に基づく保護を受けることができないということになります。
次に、建築の著作物としての著作権法上の保護について。
以前の記事でかいたとおり、
著作権法で保護される建築物とは、建築芸術といえるような創作性を備えている必要があり、
建売されているような一般住宅は、著作権法で保護される建築物には該当しません。
そうすると、建築芸術に該当しない一般的な建物は、
そもそも『建築の著作物』に該当しないことになります。
したがって、多くの一般建築物は、『建築の著作物』としての保護も受けられないことになります。
最後に、図面の著作物としての著作権法上の保護について。
住宅や橋梁などの建築物の設計図面は、
たとえそれが建築芸術といえない程度のものであっても、
図面の著作物として保護されることになります。
ですから、この図面を無断で摸倣した場合には、図面の著作物の著作権侵害に該当し、
当該図面の作者は著作権法上の保護を受けられることになります。
以上のとおり、不動産である建築物のデザインというのは、
意匠法では保護されず、著作権法において図面の著作物として保護される余地があるといえるでしょう。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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