弁理士の富田です。
さて、現在の日本の特許制度では、
手術方法や治療方法などの『医療行為』は特許権の対象とはされていません。
仮に、医療行為について特許申請した場合には、
『産業上利用することができる発明』に該当しないとの理由で
特許出願が拒絶されることになります。
では、なぜ我が国では『医療行為』は特許権の対象とはならないのでしょうか。
一般的にいわれている理由としては、『人道上の理由』が挙げられます。
つまり、医療行為を特許権の対象として認めると、
高額な特許料を負担できる者だけが、特定の手術や治療を受けられることになり、
それは人道上許されることではない、と考えられるからです。
上記の理由以外にも、もう一つ理由があります。
医療行為を特許権の対象とすると、医療行為を行う医師による特許権侵害の可能性が生じますから、
医師は、常に特許権侵害を回避する対策を講じなければならなくなり、
医師にとって負担(侵害防止対策の負担)が過度に大きくなるからです。
なお、米国においては、人に対する治療・診断・手術方法が特許権の対象とされていることもあり、
近年では、我が国でも特許制度による治療行為の保護の是非が議論されていますが、
現在のことろ、法改正に向けた結論は出ていません。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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