『入浴介護方法』の特許。その実態とは何なのか。
弁理士の富田です。
さて、『入浴介護方法』という名称の付いた特許権があります。
その内容というのは、次のようなものです。(権利内容の全文PDFはコチラ)
【請求項1】
歩行の困難な障害者のための浴室の天井に、X方向に平行に配置した2本の支持レールと、この2本の支持レールに両端を係合してX方向に移動可能な2本の移動レールと、これらの各移動レールに沿ってY方向に走行する2台の走行台車と、これらの走行台車の一方に懸垂する着脱自在の人体保護シートとよりなり、浴室内には移動式洗い台と、浴槽と、移動式拭き台とを配置し、浴室の入り口から障害者を一方の走行台車に装着した人体保護シートで吊り上げ、走行台車を移動式洗い台上に移動して人体保護シートごと洗浄を行い、次いで人体保護シートを吊り上げて浴槽上に移動して人体保護シートごと浴槽に沈め、次いで人体保護シートを他方の走行台車に移し変えて吊り上げ、拭き台上に移動して人体保護シートごと水分を拭き取り、次いで人体保護シートを吊り上げて浴室の出口まで移動して行う、入浴介護方法。
※IPDLより引用
毎度おなじみの、一般人には意味不明の特許文章なので、ここでの詳細な説明は避けますが、
『入浴介護方法』というタイトルを見ると、あたかも、
介護の方法、つまり人間によるサービス行為そのものが特許権として権利化されているようにも見えます。
しかし権利書類をよく読んでみると、
実質的には、介護方法という人間のサービス行為そのものが権利化されているわけではなく、
図示されるような新規な介護設備や器具の存在を前提とする『設備の使用方法』というものが
特許権として権利化されていることが分かります。
人為的な取り決めだけで構成される『純粋なビジネス方法』は、特許権の対象ではないわけですが、
上記の例のように、設備や装置、システムに絡めて、その使用方法という形態で特許申請することで、
サービス提供行為について権利化できる場合があるといえます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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