特許権、商標権、意匠権、実用新案権の中間省略登記の問題
~ 中間省略が許される場合と許されない場合 ~
弁理士の富田です。
特許権、商標権、意匠権、実用新案権を所有する『権利者』や『その者の住所』などの事実は、
不動産登記実務と同様に、
所管庁である特許庁にこれらの事実を届け出て、『登録原簿』に登録する必要があります。
わたしの仕事のなかでは、主に、
・引っ越しによる住所移転
・譲渡による権利移転
の2つで、この登録実務に関与することが多いといえます。
このような登録実務に多く関与しているなかで頻繁に遭遇するのが、
中間省略登記の問題です。
代表的には、次の2つのケースが挙げられます。
① 法人甲が、引っ越し等による住所移転をすでに2回以上行っている場合において(A→B→C)、
その甲が、中間の住所移転を省略して住所変更を特許庁に届け出るケース
(A→Cの住所変更の登録申請)。
② 法人甲が、引っ越し等による住所移転をすでに2回以上行っている場合において(A→B→C)、
その甲が、住所変更の事実を一切特許庁に届けることなく、
その権利を乙に譲渡し、その事実を特許庁に届け出るケース
(権利の登録住所がAで、甲の実際の住所がCで、甲が乙に権利移転するケース)。
前者の場合、すなわち、2回以上の住所移転を行っている場合には(A→B→C)、
その中間の住所移転の事実を省略して
住所移転の事実の登録申請を行うことができます(A→Cの住所変更の登録申請が可能)。
つまり、上のカッコ書の事例でいえば、
『A→B』『B→C』の住所移転登録を個別を行うことなく、
中間をすっ飛ばして、『A→C』の住所変更の登録申請を行うことができるというわけです。
後者の場合、すなわち、2回以上の住所移転を行っている場合であって(A→B→C)、
特許庁にその住所移転の事実を一切届け出ることなく、自己の権利を他人に譲渡した場合には、
前者のような中間省略登記を行うことができません。
この場合には、
譲渡による移転登録申請と同時に、
譲渡人について住所移転の事実を届け出る必要があります(表示変更登録申請)。
このように、特許庁に届け出る事実には、
中間省略できるものと・省略できないものとがありますので、
不明な場合には事前に確認する必要があります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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