不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」の要件とは・・・
不正競争防止法2条1項3号の「模倣」とは・・・
弁理士の富田です。
今回は、
・不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」、
・不正競争防止法2条1項3号の「模倣」、
に該当する要件について示した重要判例を紹介します。
【今回紹介する判例】
平成27年(ワ)第33398号 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 (棄却)
判決文の全文はコチラからダウンロードできます。
【判決のポイント】
(1)不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するためには,商品の形態に「特別顕著性」と「周知性」が求められる。
(2)外部から直接視認できない商品の中身(包装の内部)については、出所識別機能があるとは認めることができないので、不正競争防止法2条1項1号に基づいて主張することは難しい。
(3)不正競争防止法2条1項3号の「模倣」とは,「他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」をいうところ(同条5項),「実質的に同一の形態」といえるか否かは,他人の商品の形態に依拠して作成された商品の形態が,他人の商品の形態と実質的に同一といえるほどに酷似しているか否かという観点から判断すべき。
また,作り出された商品の形態に他人の商品の形態と相違する部分があるとしても,些細な相違にとどまるような場合には,当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態と評価され得る。
また,同種の商品にしばしば見られるありふれた形態は,不正競争防止法2条1項3号の保護対象となる「商品の形態」には当たらない。
以下、判決文の要約。
【事案の概要】
本件は,原告が,① 原告の販売するフェイスマスク(原告商品)の形態が原告の商品等表示として広く認識される状態に至っていたところ,被告が販売開始したフェイスマスク(被告商品)の形態は原告商品の形態と類似し,混同を生じさせるから,被告による被告商品の販売が,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たる旨,
② 被告商品は,原告商品の形態を模倣したものであるから,被告による被告商品の販売が,同条1項3号の不正競争行為に当たる旨主張して,
被告に対し,被告商品の製造販売等の差止め、被告商品の廃棄等求めた事案。
【裁判所の判断】
(1) 不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するためには,
①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,
②需要者においてその形態を有する商品が周知になっていること(周知性)
を要すると解する。原告商品の形態のうち,原告態様B,原告態様C(ただし,切込みの寸法を除く。)については,ありふれた要素にすぎない。
また,原告態様A,原告態様Cのうち切込みの寸法に係る部分についても,他の同種商品と比較して大きな相違点であるとは認められず,顕著な特徴を有するとか,需要者に対して強い印象を生じさせるということはない。この点,原告は,内容器の構造についても出所識別機能を有する旨主張するが,内容器は外面包装の内側にあり,外部から直接これを視認することはできないから,この点について出所識別機能があるとは認めることができない。
以上によれば,原告商品の形態は,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているということはできず,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示には当たらない。
(2) 不正競争防止法2条1項3号の「模倣」とは,「他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」をいうところ(同条5項),「実質的に同一の形態」といえるか否かは,他人の商品の形態に依拠して作成された商品の形態が,他人の商品の形態と実質的に同一といえるほどに酷似しているか否かという観点から判断すべきである。また,作り出された商品の形態に他人の商品の形態と相違する部分があるとしても,些細な相違にとどまるような場合には,当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態と評価され得る。また,同種の商品にしばしば見られるありふれた形態は,不正競争防止法2条1項3号の保護対象となる「商品の形態」には当たらないと解すべきである。
そこで検討するに,原告商品と被告商品とは,共通ないし近似する形態はいずれも同種の商品にしばしば見られるありふれたものにとどまるから,全体として見れば,被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一であるということはできない。
なお,外面包装の内側の内容器に係る形態については,需要者が原告商品を通常の用法に従って使用するに際して内容器の形態を認識することはできないから,「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる」商品の内部の形状等(不正競争防止法2条4項)に当たらず,「商品の形態」に含まれない。
そうすると,被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一であるとはいえず,依拠の有無について検討するまでもなく,被告の行為は「模倣」には当たらない。
(3) したがって,原告の請求はいずれも理由がない,として原告の請求は棄却された。
本日もお読みいただいて有難うございました。
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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