弁理士の富田です。
さて、『元請け業者』から仕事を受けた『下請け業者』の行為が、他人の特許権に抵触した場合、
下請け業者は常にその侵害行為の責任を負うことになるのでしょうか。
例えば、飲料容器の製造について『元請け業者A』が『下請け業者B』に依頼したと仮定します。
『下請け業者B』による飲料容器の製造が、他人の特許権(飲料容器の特許)に抵触することが判明した場合、
侵害行為を直接的に実施したのは下請け業者Bですから、この業者Bがその責任を負うことになるのでしょうか。
今日は、この点について解説したいと思います。
上記事例における『下請け業者B』による飲料容器を製造する行為は、
特許製品を業として製造する行為に該当しますから、
『下請け業者B』の行為は、原則として、特許権侵害に該当することになります。
しかし、『元請け業者A』が当該特許権について何らかの権原(実施権)を持っている場合には、
このAの権原を援用して特許権侵害を否定できる可能性があります。
この点に関する過去の判例によれば、下記の3要件をすべて満たす場合には、
『下請け業者B』の行為を『元請け業者A』の行為と同一視できるとして、下請け業者Bを元請けの単なる『手足』として認定し、
下請け業者Bは元請けの権原(実施権)を援用できることとされています。
① 元請け業者と下請け業者との間に工賃を払って製作せしめる『契約』が存在すること。
② 製造等について原料の購入や品質等について元請け業者が指揮監督をしていること。
③ 製造した製品を元請け業者に引渡し、他へ売り渡していないこと。
なお、『元請け業者A』が当該特許権について正当な権原(実施権)を持っていない場合には、
上記3要件を満たしていても、『下請け業者B』は侵害成立を否定できないことになるので、その点に注意する必要があります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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