弁理士の富田です。
弊所には現在5名の弁理士が所属しており、専門分野も様々であることから、
様々な分野の発明についての特許出願の依頼を承っています。
今日は、そのなかでもケミカルの分野であって『数値限定』に係る発明の特許出願で留意すべき事項について
簡単に説明します。
機械などの構造系の発明と違って、合金などのケミカルの分野では、
発明の特徴を『数値』で特定することがあります。
例えば、『成分aを10%-25%含有しているx合金。』といった感じです。
このような数値限定の特許出願で留意していただきたいことがありますので、
今日は、特に大切な3つの留意事項を列挙します。
留意事項①: 最低でも2点または3点(上限側・下限側・中間の3つの数値)の実験データを、実施例として明細書中に記載。
留意事項②: 出願後における実験データの後出し・追加は、原則として認められないと理解しておく。
留意事項③: 出願後は、明細中に記載した『数値』でしか争えないと理解しておく。
留意事項①については、
このデータが不足している場合、ケミカル分野では発明の効果が確認できないことになるので、
記載不備(実施例不足)の拒絶理由を受けることになります。
しかも後述するように、実験データの後出しは原則として認められません。
ですから、出願時に明細書中に記載する実験データは、十二分に充実させたものとしてください。
実験データが著しく不足した特許出願では、効果の裏付けが乏しく、特許査定を受けることはかなり難しいです。
次に留意事項②についてですが、
拒絶理由が通知されたときに実験データの補充追加を図ることは、
現在の特許庁に対する対応(拒絶理由通知に対する応答)としては、原則として認められていません。
ですから、「発明の効果を裏付ける実験データが不足している」旨の拒絶理由をうけたときには、基本的に当該拒絶理由を回避することは難しいといえます。
なお、審査官によっては、実験データの後出しによって例外的に拒絶理由解消を認めることもありますが、
あくまでも充実した実験データを出願時の明細書中に書くべきことに留意してください。
次に留意事項③についてですが、これは意外と大切です。
例えば、『成分aを10%-25%含有しているx合金。』の場合であれば、
多少冗長になって読み難くなっても、
明細書中に、例えば『10%-25%がよく、好ましくは12%-23%、より好ましくは14%-21%が望ましい。』などと記載してください。もっと書いてもよいと思うくらいです。
減縮補正によって拒絶理由を解消させるときには、これらの数値が必ず役立つことになります。
数値のバリエーションがとにかく大切です。この点に十分にご留意ください。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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