いわゆる『先使用権』についてよくある誤解

07.30


弁理士の富田です。

弊所には特許権侵害に関する相談が寄せられますが、このような相談があると、
『先使用権』の主張の可否について検討することがよくあります。

特許権は独占排他権ですから、
第三者が権原なく特許品の製造等を行えば、原則として、特許権侵害が成立します。

ただし、侵害被疑者が先使用権を立証できる場合には、
特許権侵害は成立しないことになり、そのまま特許品の製造等を継続できます。

『先使用権』とは、簡単にいえば、独占権である特許権に対抗できる権利です。

この『先使用権』について、多くの方が誤解しているので、今日はその点について解説します。

クライアントから特許権侵害に関する相談(クライアントが侵害被疑者の場合の相談)をうかがっていると、
弊社には先使用権があり、特許権の侵害には該当しないと思います』といった意見をいただくことがあります。
本当に先使用権があり、それを立証できる場合には何の問題もありません。即解決です。

しかし、どのような証拠で先使用権の存在を立証しますか? といった質問をしてみると、
発明の内容を記載した書面があり、その書面に公証役場で確定日付印(特許権の出願日前の日付)を
押印してもらっています。これが証拠です。

といった答えが返ってきます。

これが大きな誤解です。

上述した確定日付印が押された書面だけでは、
『その書面がその日にこの世に存在した』ことは立証できても、
先使用権を有することを証明することはできません。
この点を多くの方が誤解しています。

では、特許権の侵害被疑者が先使用権を証明するためには、
具体的に何を立証する必要があるのか。

結論を申し上げます。
先使用権の存在を証明するためには、下記①~④の経緯を客観的資料で立証することが必要です。

① 先使用発明に至る研究開発行為
② 先使用発明の完成
③ 先使用発明の『実施である事業』の準備
④ 先使用発明の『実施である事業』の開始

よって、確定日付印が押された書面1枚では、
先使用権の立証が極めて困難であることがお分かりいただけたと思います。

特に、発明の特許出願を避け、ノウハウとして秘匿することを選択する場合には、
先使用権の立証方法について今一度ご確認ください。

本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

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