LINEの既読表示機能は発明である。その特許申請は…
弁理士の富田です。
無料の通話・メッセージアプリ『LINE』は、
いまやユーザ数が3億人を突破し、若いスマホユーザを中心に広く普及しています。
似たような機能を持つアプリが他にもあるのに、
LINEは、なぜここまで普及したのか。
様々な理由がありますが、その理由の一つと考えられるのが『既読』表示機能です。
相手がメッセージを読んだか否かがリアルタイムで分かるため、
メッセージの送信者側にとって利便性が高いと考えられます。
一方で、メッセージの受信者側にとっては、
その既読表示機能が精神的負担になることもあり、
『LINE疲れ』といった言葉まで登場するに至っています。
ところで、LINEと似たような他のアプリにも既読表示機能が備わっています。
例えば、Facebookメッセンジャーには、『既読』ではないですが、
実質的にそれと同じ意味を示す『開封』といった文字が
表示されるようになっています。
『既読』も『開封』も、機能的には実質的に同じことを意味していますから、
実質的には、『既読表示機能』が、色々なメッセンジャーアプリで使われていることになります。
そうすとると既読表示機能について
LINE株式会社が特許を取得しているわけではないということが分かります。
そこで、『既読』機能の特許申請の有無について調べてみると、
LINEの既読表示機能と同等のアイデアについて特許出願しているものが見つかりました。
特許出願番号:特願2006-259791
特許出願日:平成18年9月25日
発明の名称:メールシステム、メール管理方法及びプログラム
この特許申請の主たる内容は次のとおりです。(申請内容の全文PDFはコチラ)
【請求項1】
・送信されたメールを閲覧するためのサイトに、前記メールの送信先ユーザがアクセスしたか否かを判断する判断手段と、
・送信された各メールについて、送信先ユーザがアクセスしたと前記判断手段が判断した場合には“既読”の値を対応付けて記憶し、送信先ユーザがアクセスしたと前記判断手段が未だ判断していない場合には“未読”の値を対応付けて記憶する記憶手段と、
・前記記憶手段の記憶内容を、前記メールの送信元のユーザに対して参照させる参照手段と
を備えるメールシステム。
この特許申請では、
メールサーバーに、『既読』『未読』の一方の情報を記憶させて、
メールの送信者側が、『既読』『未読』の情報を閲覧できることを特徴としています。
この特許申請と、LINEの既読表示機能を比較すると、
・上記特許申請の方では、メッセージではなく『メール』と称しており、また、
・上記特許申請の方では、『既読』に加えて『未読』まで知らせるようになっているなど、
表現上いくつかの相違点はありますが、コンセプトの点で共通しています。
この特許申請は、権利化されていれば、それなりの影響力を持ったと考えられますが、
幸か不幸か、拒絶理由通知に応答しなかったため、最終拒絶処分となりました。
粘って権利化していれば、価値ある権利の一つとなっていたことでしょう。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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富田国際特許事務所
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