弁理士の富田です。
さて、自分の特許権に対して第三者が特許無効審判を請求してきた場合、
権利者に対して特許庁から審判請求書の副本が送達されるので、
それによって特許権者は無効審判請求の事実を知ることができます。
このような特許無効審判の請求に対して、特許権者が応答することなく、そのまま放置した場合、
無効審判手続きはどうなるのでしょうか。
審判手続きはストップしたままになるのでしょうか。
あるいは、特許権維持の意思なしと見做され、当該特許権は自動的に無効処分となるのでしょうか。
この点、特許法では、職権進行主義(152条)を採用しているので、
上記のように審判請求を放置しても、審判官は、当事者の意思とは無関係に職権で審判手続きを進めることになります。
また特許法では、職権探知主義(153条)を採用しているので、
特許権者が審判請求に対して答弁しなくても(つまり放置していても)、
審判官は、審判請求理由の妥当性や特許権の有効性などを客観的に判断することになります。
したがって、特許権者が無効審判請求を放置しても、無効審判手続きがストップすることはなく、また、必ずしも特許権が無効処分となるわけではないといえます。つまり、特許権者が答弁することなく放置した場合でも、結果として、無効審判請求が不当と判断され、特許権が維持される可能性もあります。
ただし、特許権者が答弁しないことは、審判官の心証形成等に影響すると考えられますから、その点で特許権者側が不利に扱われる可能性があるといえます。したがって、特許権の維持を望む場合には、無効審判請求に対して答弁書等を提出して必要な防御を行うことが大切であるといえます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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