弁理士の富田です。
さて、以前書いた記事で拒絶理由通知について解説しましたが、
この拒絶理由通知に対する応答時の補正では、新規事項を追加する補正は認められていません。(特許法17条の2第3項)
「新規事項を追加する補正」とは、
特許出願時点での申請書類(つまり申請時の書類)に記載されていない事項を、
出願書類に新たに書き加えることです。
最初の拒絶理由通知に対する応答時において、特許請求の範囲について補正するときには、
この『新規事項の追加』に該当しないように注意すべきです。
なぜこの点に注意すべきかというと、
勿論、これが新たな拒絶理由(新規事項追加の拒絶理由)を生じさせるという理由もありますが、
もう一つ重要なのは、特許請求の範囲に新規事項を追加すると、
場合によっては「新規事項追加の拒絶理由」の解消が困難となるという理由が挙げられます。
今日はまず、最初の拒絶理由通知に対する応答時において、特許請求の範囲に新規事項を追加した場合でも、
その後の補正で治癒可能な事例について、具体例を挙げて説明したいと思います。
特許請求の範囲についての『新規事項追加の拒絶理由』を解消できる場合
例えば、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正において、
下記のように、数値について新規事項を追加する補正を行ったと仮定します。
出願時の請求項1:『成分x,y,zのいずれか1種を20-30%含有する材料A。』
補正後の請求項1:『成分xを10-40%含有する材料A。』
※数値「10-40%」は出願書類に記載されていない新規事項。
このような場合には、その後に「最後の拒絶理由通知」が発送され、
補正後請求項1について新規事項追加の拒絶理由(特許法17条の2の拒絶理由)が指摘されるわけですが、
それに対する応答で例えば『成分xを20-30%含有する材料A。』と減縮補正すれば、
当該拒絶理由は解消されることになります。
また、このような補正であれば、
最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正要件(特許法17条の2第5項)に違反することにもなりません。
「最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正要件」とは、
主として、特許請求の範囲の減縮であって、発明特定事項の限定に該当することなどが挙げられます。
したがって、この事例に該当するような新規事項追加の拒絶理由は、
その後の補正(特許請求の範囲の減縮であって、発明特定事項の限定)で解消することが可能といえます。
次回は、新規事項追加の拒絶理由を解消できない場合について、具体例を挙げて説明したいと思います。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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