特許請求の範囲に新規事項を追加する補正について(その2)

 

弁理士の富田です。

さて、本日は前回の続きです。

前回の記事では、
特許請求の範囲に新規事項を追加すると、
場合によっては「新規事項追加の拒絶理由」の解消が困難となる場合があると説明しました。

今日は、これに該当する事例について具体例を挙げて説明したいと思います。

 

特許請求の範囲についての『新規事項追加の拒絶理由』を解消できない場合

例えば、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正において、
下記のように、発明特定事項を追加する補正を行ったと仮定します。

出願時の請求項1:『経路探索手段と経路表示手段を具備するナビゲーション装置。』
補正後の請求項1:『経路探索手段と経路表示手段と音声案内手段を具備するナビゲーション装置。』
※「音声案内手段」は出願書類に記載されていない新規事項。

この場合は、その後に『最後の拒絶理由通知』が発送され、補正後の請求項1について新規事項追加の拒絶理由(17条の2の拒絶理由)が指摘されるわけですが、それに対して『音声案内手段』を削除補正すると、原則として、その補正が却下されることになります(特許法53条)。

なぜなら、この補正、つまり音声案内手段の削除は、特許請求の範囲の減縮に該当せ(削除することで権利範囲が拡がってしまうので)、また、発明特定事項の限定にも該当しないので、「最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正要件」を満たさないからです。
(「最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正要件」については前回解説しました。)

したがって、上記事例の場合には、新規事項追加の拒絶理由を解消するための補正が却下される結果、もとの拒絶理由(最初の拒絶理由)が維持されることになり、拒絶査定という結果になります。

ですから、最初の拒絶理由に対する補正といえども、このような事例に該当する新規事項の追加を行うと、その後に当該新規事項追加の解消が困難になるので、特許請求の範囲の補正にあたってはその点に十分に注意する必要があります

 

本日もお読みいただいて有難うございました。(さらに次回に続きます…)
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

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