移転登録申請の手続が却下される確率は意外に高い。失敗できない場合にどうすればよいのか。
弁理士の富田です。
『移転登録申請』とは、譲渡や会社合併などの理由で、特許権や商標権などの権利を移転する手続きをいいます。
手続きの流れとしては、譲渡証書などの証明書類を揃えて申請書類に添付し、特許庁に提出するだけなのですが、
特許庁の発表によれば、そのうちの1割を超える申請が、記載不備や印鑑の相違、その他の理由により却下される結果となっています。形式的な手続きのなかでは、飛びぬけて高い却下率といえるでしょう。
特許庁に対する多くの手続きは、通常、申請者だけが関与する手続きなので、
書類に不備があっても、最悪、手続きをやり直せば目的を達成することができます。
しかし、この移転登録申請は、
譲渡人または譲受人といった『相手方の押印や署名』が必要な手続きとなるので、
場合によっては、やり直しができない場合があります。
例えば、相手方が外国人や破産した法人などの場合には、譲渡証書の作り直しが極めて難しい場合があります。
また、移転登録申請書に不備があった場合において、
申請書の添付書類(譲渡証書など)を再利用して再申請するときは
却下処分と申請書類の返還(特許庁からの返還)を長期にわたって待つ必要があるので、手続きの完了に相当の時間がかかります。
したがって、早急な移転完了が必要とされるケースでは、致命的な事態を招きます。
では、移転登録申請を行うにあたって、絶対に失敗できない場合、どうすべきなのか。
まず、IPDLで権利者(登録名義人)の住所と名称を確認する。
申請書に記載の住所や名称が、特許庁側に登録されたものと相違しているときには、
ほぼ間違いなく却下されることになります。
次に、一番重要なこと。
特許庁に出向いて『移転登録担当』の係官に直接見てもらう。
担当官によって多少差がありますが、記載内容や印影などについて事前チェックを受けることができ、
不備や足らない点がある場合には事前に指摘してもらうことができます。
すべてのケースについて、特許庁で事前チェックを受ける必要は無いですが、
譲渡証書などの作り直しができない場合には、特許庁での事前チェックを受けることが得策であるといえるでしょう。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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