知財初心者の中小企業必見! 『特許出願』と『実用新案』の選択に悩む場合…
弁理士の富田です。
さて、弊所に特許相談に来られる企業さまが、特許出願の初心者だった場合、
そのアイデアの内容によっては、特許と実用新案の違いについて簡単に説明させていただくことがあります。
それぞれの代表的メリット・デメリットを簡単に説明すると、
おおむね次のとおりになります。
【特許出願のメリット・デメリット】
■メリット:
発明の新規性や進歩性などの実体審査を経て特許権が付与されるため、権利の法的安定性が高い。
■デメリット:
審査の結果が出るまで2年程度要し、また、
審査の結果によっては特許権の取得を断念することになるので、
それまでに費やした時間やお金が無断になるリスクがある。
【実用新案のメリット・デメリット】
■メリット:権利付与にあたって形式的審査しか行われないので、早期の権利化が期待でき(通常は数か月)、また、
登録可能性が極めて高いので、時間やお金が無駄になるリスクが少ない。
■デメリット:実質的に無審査で登録されるため、権利の法的安定性が低いというデメリットがある。
弊所に相談に来られる方のほとんどは、法人様ですから、
知的財産をビジネスで活用することを想定しています。
したがって、従来では、『法的安定性が低い』実用新案の方を勧めることはありませんでした。
しかし、現在の特許法では、
実用新案の申請日から3年以内であれば、
その実用新案登録を特許出願に変更することができるようになりました。
これを法的には『実用新案登録に基づく特許出願』といいます。
この『実用新案登録に基づく特許出願』の制度を活用することで、
実用新案の申請日から3年の時点で、
・そのまま実用新案権を維持するのか、あるいは、
・実用新案を特許出願に変更して特許権の取得を目指すのか
を選択できるようになります。
特許権が不要だということであれば、そのまま実用新案権を維持してもよいし、
逆に、あらためて特許権の取得を目指したいということであれば、その実用新案権を放棄して、あらためて特許出願をすることができます。
したがって、『特許出願』と『実用新案』の選択に悩み、どちらか一方に決めかねている場合には、
まずは、実用新案として権利化して、時間と費用が無駄になるリスクを最小限にし、
申請日から3年の時点で、あらためて特許権取得の必要について検討するのが、得策といえます。
なお、言うまでもないことですが、
『実用新案登録に基づく特許出願』の制度を利用する場合には、
実用新案の申請日から3年の期限を失念しないように十分に注意する必要があります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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富田国際特許事務所
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