弁理士の富田です。
さて、特許の申請内容というのは、原則として
特許出願の日から1年6箇月を経過したときに国が発行する公報(公開公報)に全文掲載されます。
わたしは、取り扱う業務の性質上、日頃からこの公開公報を大量に読み込んでいるわけですが、
たまに、他人の公開公報の大部分をコピペし、多少新規な事項を付け加えて、自分名義で特許申請している方を見かけます。
つまり、同業者の特許出願の内容を見て、その内容をベースにして多少書き足して、新たに特許出願しているわけです。
そこで今日は、他人の特許公報(明細書等)の内容を、自己の特許申請書類にコピペする行為について検討してみます。
特許庁は、特許電子図書館利用上のご案内において
公開される特許明細書等の著作権の取り扱いについて、次のとおりに説明しています。
特許電子図書館で提供する公報に掲載されている特許請求の範囲、明細書、要約書の文章等や図面に掲載されている文章や図面等は、通常、その創作者である出願人等が著作権を有していますので、転載する場合には許諾が必要になることがあります。
少し言葉が足りないので補足しますと、特許明細書や図面などの記載内容というのは、
「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」ですから、
これは当然に著作物であって、著作権法で保護されるものであります。
そして、弁理士に原稿の作成を依頼している場合には、
通常、その特許明細書等の著作権は、原稿の作成者である弁理士が保有します。
(発明者が作成している場合には、当然ながら、弁理士ではなくその発明者又は企業が著作権者となります。)
ですから、他人の公開特許公報を見て、その内容を無断で自己の特許出願明細書(申請書類)にコピペすることは、
新規な事項を付け加えるとしても、場合によっては、弁理士や発明者等が有する著作権を侵害することになるので注意が必要です。
ただし、上記は法律論であって、
特許申請にあたって常識の範囲内でコピペし、自分なりに加筆・修正するのであれば、
現実的には著作権侵害の争いに発展することはほとんどないといえるでしょう。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
富田国際特許事務所
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