不正アプリは知的財産として保護されるのか

スマホから個人情報を抜き取るなどの不正なアプリ。これも知的財産の一種なのか。

弁理士の富田です。

 

今朝、ニュースを見ていたら、
スマホから個人情報を抜き取る『不正アプリ』を提供したとして
このアプリを作成・提供した者が不正指令電磁的記録提供の疑いで逮捕された
といった報道がありました。

 

ここでいう不正アプリとは、『違法な目的に使われるコンピュータ・プログラム』を指しているわけですが、
こういった不正なプログラムは、違法な目的に使われるとしても、知的財産の点では保護されるのでしょうか。
今日はこの点について、特許法、著作権法の観点から検討してみたいと思います。

 

特許法による保護について

不正アプリは、コンピュータ・プログラムの一種ですから、
プログラムの発明として特許申請することは可能です(たとえ違法な目的に使われるものであっても)。

しかし、特許法では、
公の秩序を害するおそれがある発明については登録を認めていないため(特許法32条)、
申請しても拒絶され、登録されないといった結果なります。

したがって、そのような不正アプリは、特許制度では保護されないということになります。

 

著作権法による保護について

著作権制度では、特許制度のように『審査』や『登録』を権利発生の要件としていないので、
プログラムの完成と同時に、プログラムの著作権が発生します。

そして、著作権法では、
公の秩序を害するような表現物を保護対象から除外するといった規定が存在しません。
この点が特許法と異なります。

したがって、多少違和感はありますが、
不正なアプリであっても、著作権法上では知的財産(プログラムの著作物)として保護されることになるといえるでしょう。

もっとも、
不正アプリなどの違法目的物について、現実に著作権侵害が争われた場合には、
裁判所の判断によっては、そのような不正アプリが著作権の保護対象から除外されるといった解釈が生じる余地はあるといえます。

 

本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所

 

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Author Profile

富田 款国際弁理士事務所 代表弁理士
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。

【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団

【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など

【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。

【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」

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