LINE Creators Market の利用規約を読んでみた…
弁理士の富田です。
さて、2014年4月17日より登録を開始したLINE Creators Market。
利用者にとっては、
自作のスタンプに関する権利がどのように扱われるのか、
非常に気になるところです。
利用開始と同時に、自動的にLINE側に譲渡されるのかなどなど…。
疑問点がたくさんです。
そこで、LINE Creators Market『利用規約』を知的財産の観点から見てみましたので、
その利用にあたっての注意事項などについて今日は簡単に書いてみたいと思います。
以下は、LINE Creators Market『利用規約』の抜粋。
本日解説する部分のみを抜粋しました。
(https://creator.line.me/ja/terms/より引用)
【3. 規約の変更】
当社は、当社が必要と判断する場合、あらかじめクリエイターに通知することなく、いつでも、本規約および個別利用規約を変更できるものとします。変更後の本規約および個別利用規約は、当社が運営するウェブサイト内の適宜の場所に掲示された時点からその効力を生じるものとし、クリエイターは本規約および個別利用規約の変更後も本サービスを使い続けることにより、変更後の本規約および適用のある個別利用規約に対する有効かつ取消不能な同意をしたものとみなされます。かかる変更の内容をクリエイターに個別に通知することはいたしかねますので、本サービスをご利用の際には、随時、最新の本規約および適用のある個別利用規約をご参照ください。
【8. 本コンテンツの作成および利用】
8.7. クリエイターは、本サービスを実際に利用することにより、当社に対し、本規約に定める範囲において本素材および本コンテンツを利用する権利(複製、翻訳、翻案、改変または公衆送信する権利を含みます。またこれらの権利を第三者に再許諾する権利を含みます。)を許諾したこととなり、当社はかかる利用権を取得します。また、クリエイターは、本素材および本コンテンツに関する著作者人格権を当社または当社の指定する第三者による上記範囲での利用に対しては行使しないことに同意したこととなります。
【10. 禁止事項】
10.3. 当社または第三者の著作権、商標権、特許権等の知的財産権、名誉権、プライバシー権、その他法令上または契約上の権利を侵害する行為。
まず、【項目3: 規約の変更】について。
これはNET上のサービスでよく見られる条項です。
LINE側は、ユーザに通知することなく、いつでも自由に、この利用規約を変更できます。
次に、【項目8.7: 本コンテンツの作成および利用】について。
ここが今日のポイントですね。
・まず項目8.7の前段を見ると、ユーザ側がLINE側に著作権を許諾するようになっています。
つまり、著作権はLINE側に譲渡されるのではなく、
スタンプの著作権はあくまでもユーザ側が保有し、ライセンス(利用権)をLINE側に与える、
といったカタチになっています。
・ただし、LINE側に許諾する権利には、『第三者に再許諾する権利』が含まれていますから、
ユーザが作成したスタンプが、了知しない企業(再許諾を受けた者)によって利用される可能性があるといえます。
・続いて、項目8.7の後段には、『著作者人格権』について規定されています。
この規定には注意する必要があります。
つまり、『著作者人格権をLINE側に対して行使しないことに同意』とありますから、
ユーザは、LINE側に対して、『同一性保持権』や『氏名表示権』といった著作者人格権を行使できないことになります。
すなわち、
スタンプとともに作者名を表示しろ、といったことをLINE側に要求できず、また、
LINE側がスタンプの細部をいじったとしても、その改変行為に対して文句を言えない、
といったことになります。
なお、現時点での項目8.7の記載内容から判断すると、
ユーザがその自作スタンプを商標登録したり、
自身のブログやウェブサイトに、そのスタンプ画像を掲載することについては、
特に問題ないと考えられます。
最後に、【項目10: 禁止事項】について。
これは当然のことなのですが、
他人の著作物を盗用してスタンプを作成したり、あるいは、
他人の商標権に抵触するようなスタンプを作成すると、
審査に落ちたり、或いは、スタンプやアカウントの削除といったペナルティーを受けることになります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
-
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
富田国際特許事務所
TEL:03-6205-4272 FAX: 03-3508-2095
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