著名人の名前を商標登録申請する危険性
最近、大谷翔平選手(MLBロサンゼルス・ドジャース)の名前が中国で商標出願されたというニュースが世界を駆け巡りました。この出来事は、名声のある人物の名前を無断で商標登録しようとする試みが、どのような結果を招く可能性があるのかを明確に示しています。特に日本において、有名人の名前を商標として出願する行為は、慎重に考慮する必要があります。なぜなら、いくつかの重要な理由により、望ましくない結果を招く可能性が高いからです。
商標法による拒絶
日本の商標法4条1項8号は、他人の氏名、名称、肖像、署名等を含む商標の登録を禁止しています。これは、著名人の名前を無断で使用し、その人物の名声を不当に利用することを防ぐための措置です。この規定により、有名人の名前を無断で商標登録しようとした場合、出願は拒絶される可能性が高くなります。これは、時間と資源の無駄遣いに他なりません。
ビジネス上の信頼性の損失
不当な商標出願は、その企業や個人のビジネス上の信頼性にも影響を及ぼします。特に、業界内外での評判が損なわれることにより、取引先や顧客との関係が悪化する可能性があります。長期的には、ビジネス機会の喪失や売上の減少につながる可能性が考えられます。
社会的制裁のリスク
商標出願が公開されると、申請者の情報が公開公報(官報)に掲載されます。具体的には、申請者が個人であれば、その住所・氏名が公開され、申請者が会社であれば、その所在地と会社名が公開されます。これにより、SNSをはじめとするインターネット上で、申請行為が広く知れ渡り、批判や社会的制裁を受けるリスクがあります。有名人のファンや一般の人々からの非難は、申請した個人や企業の社会的評価に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
公開された情報の永続性
一度公開された情報はインターネット上に長く残ります。これは、一時的な批判にとどまらず、長期的な評判損失につながることを意味します。出願に関する否定的な情報が永続的に残ることで、将来にわたってその個人や企業のイメージが損なわれる可能性があります。
結論
大谷翔平選手の名前をめぐる中国での商標出願事件は、有名人の名前を無断で商標として出願する行為がもたらす潜在的なリスクと負の影響を浮き彫りにしました。日本においては、このような試みは商標法により拒絶されるだけでなく、社会的制裁や評判損失といった深刻な結果を招く可能性があります。そのため、有名人の名前を商標として利用しようとする場合は、その法的、社会的な帰結を十分に理解し、慎重に検討することが重要です。結局のところ、尊敬と倫理的な行動は、ビジネスの世界においても、最も価値のある資産の一つです。
富田国際特許事務所 弁理士 富田款
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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