弁理士の富田です。
さて、「土木分野の特許申請において留意すべき事項」について、これまでに2回解説してきましたが(その1、その2)、
今日はその第3弾です。
土木分野でよく特許申請される発明の一つに『施工方法(工法)』があります。
この施工方法というのは、概念的には、「複数の工程の集まりで構成されている方法の発明」と捉えることができますから、
特許権の権利範囲を決定づける特許請求の範囲には、例えば「工程Aを実施し、次に工程Bを実施し、その後工程Cを実施する、○○○工法。」などと記載することができます。
ここで注意というか、検討すべき点があります。
上記の書き方では、工程A,B,Cは、その記載順どおりに実施するのが前提となっており、これを第三者が異なる順序で実施した場合には、特許権に抵触しないということになります。
しかし、「工程A,B,Cの順序での実施」のみならず、例えば「工程B,A,Cの順序」や「工程C,B,Aの順序」での実施についても、特許権で独占したいと望む場合には、各工程の実施順序を限定しないように書き方を工夫する必要があります。
具体的には、(あくまでも一例ですが)例えば「工程Aと、工程Bと、工程Cを含む、○○○工法。」などと記載し、併せて発明の詳細な説明中(明細書中)に、工程の実施順は特に限定されないといった趣旨の説明を色々と書き加えることで、工程の実施順序が限定されなくなり、広い権利範囲を確保することが可能になります。
なお、上述した「工程Aと、工程Bと、工程Cを含む、○○○工法。」といった書き方は、日本語の文章として若干違和感がありますが、特許実務の世界では工程の実施順序を特定しない書き方として一般的に理解されているので、特許申請においてこのような書き方を採用すること自体は特に問題ありません。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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