特許出願における実験データの捏造問題。
STAP騒動を受け、この問題を検討してみた。
弁理士の富田です。
さて、材料や医薬などのケミカル系の特許申請において、
権利化の鍵を握るのは、言うまでもなく『実験データ』です。
どんなに画期的な発明であっても、
特許出願の申請書類に記載する実験データ(実施例)が不足していれば、
特許権を取得することはできません。(ケミカル分野では)
では、その特許出願に記載した実験データが捏造されていた場合、
特許庁の担当審査官は、それを見抜くことはできるのか?
残念ながら、実験データに明らかな矛盾等が無い限り、
特許庁の審査官は、それを見抜くことはできません。
したがって、特許出願の申請書類に捏造された実験データが添付されていた場合、
特許権がその者に付与されるといったことが生じ得ます。
しかし、このような実験データの捏造は、犯罪であり、特許法でも禁じられます。
以下は、特許法でその点を規定した条文になります。
【特許法197条】(詐欺の行為の罪)
詐欺の行為により
特許、特許権の存続期間の延長登録又は審決を受けた者は、
三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
上の条文に記載されているとおり、
詐欺の行為により特許を受けたものは、
懲役または罰金に処せられることになります。
ここでいっている『詐欺の行為』とは、
例えば、捏造した実験データを審査官に提出し、
本来であれば特許を受けられないはずの発明について、特許を受けた場合などが該当します。
ですから、特許申請の手続きで、実験データ等を捏造すると、
犯罪者として罰せられることになるので、その点に十分に注意する必要があります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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