弁理士の富田です。
わが国で申請される特許出願の数は、1年間当たり約35万件であり、その95%以上を企業の申請が占めます。
つまり、わが国の特許出願の95%以上は、企業の従業員が完成させた『職務発明』に関するものであるといえます。
さて、職務発明についての『特許を受ける権利』は、現行法のもとでは、発明者が原始的に取得するため、
企業が法人名義で特許出願するためには、すべての発明者から『特許を受ける権利』の譲渡を受ける必要があります。
この点は多くの方がご理解されていると思います。
ただし、1つご注意いただきたい点があります。
1つの発明について発明者が複数いる場合には、
『特許を受ける権利』の譲渡について発明者相互の『同意』を得る必要があります。
特許法33条3項では、
『特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。』
と規定しています。
この規定は、職務発明に係る『特許を受ける権利』の譲渡に対しても例外なく適用され、また、
企業の勤務規定等に予約承継が定められている場合であっても適用されます。
つまり、勤務規定等に予約承継が定められている場合であっても、
発明者相互の『同意』を得ていないときには、特許を受ける権利は法的に企業に移転していないことになり、
その場合、当該特許出願は拒絶理由を有し、また、権利化後においては特許権は無効理由を有することになります。
したがって、発明者が複数いる場合には、特許を受ける権利の譲渡について、発明者相互の同意を得る必要があります。
なお、実務上のテクニックとしては、1枚の譲渡証書に、
・特許を受ける権利を譲り受ける者(企業)の全員を連名にて記載するとともに、
・特許を受ける権利を譲り渡す者(発明者)の全員を連名にて記載し、
・当該書面に発明者全員が押印することで、
『譲渡』と『同意』の意思を証明することができます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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