弁理士の富田です。
さて、前回は香水アプリに関連する特許出願をご紹介しました。
特許出願番号は特願2012-9566、発明の名称は「香料調製装置」、出願人は兵神装備株式会社。
さて、この「香料調製装置」の特許出願はPCTルートで外国にも申請される予定らしいので、
将来のビジネス展開に対する出願人の期待が相当なものであることが分かります。
この特許出願の申請内容を見ると、「香料調製装置」はスマホを含み得る概念であると解釈可能ですから、
この「香料調製装置」を機能させるプログラムは、いわゆるアプリとして解釈することが可能です。
ところが、この特許出願には、権利化を求めている発明に「プログラム(ソフトウェア)」が単独で含まれていません。
つまり、この特許出願で権利化が申請されているのは、スマホに相当する「香料調製装置」であって、
アプリに相当する「プログラム(ソフトウェア)」については権利化が求められていないのです。
アプリ特許を勧める専門家の立場から見ると、正直、もったいない気がします。
(もっとも、この出願人は、スマホを香料調製装置として機能させることに興味が無いようにも思えます。)
特許権の侵害というのは、権利化された発明のすべての特徴を具備するものを製造販売等した場合に成立します。
逆に言えば、権利化された発明の一部分についてだけ製造販売等しても、特許権侵害は成立しないことになります。
したがって、上記「香料調製装置」が仮に特許されたと仮定して、この装置の特徴をすべて具備するものを製造等した場合に、はじめて特許権侵害が成立することになります。
一方、スマホやタブレット端末の世界では、多くの場合、
端末を製造販売する者、アプリを作成販売する者、それぞれが異なっています。
そうすると、上記「香料調製装置」の特許出願が権利化されても、
① 香水アプリだけを提供する者
② 香水アプリをインストール可能なスマホだけを製造販売する者
③ 自己のスマホに上記アプリをインストールして、このスマホを「香料調製装置」として個人的に利用する者
の行為はいずれも、原則として特許権を侵害しないことになります。
(①②は香料調製装置の一部実施にすぎず、また、③は個人的利用にすぎないため。)
したがって、他人によるアプリの商業的提供行為を制限したい場合には、
装置や方法に加えて、プログラム(アプリ)そのものについても権利化を申請する必要があります。
なお、プログラム(アプリ)について特許申請が可能であることは、以前解説したので、そちらの方をご参照ください。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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