特許庁への『住所移転』の届け出を怠ると…
弁理士の富田です。
さて、特許や商標の申請手続きなどにおいて(あるいは権利の取得後において)、
申請人や権利者の住所に変更があった場合には、
速やかに住所移転の事実を特許庁に届け出なければなりません。
この住所移転の届け出は、
・特許や商標などの権利の登録前は『住所変更届』
・特許や商標などの権利の登録後は『登録名義人の表示変更登録申請書』
によって行います。
ところが、特許庁に対する住所変更の手続きというのは、極めて怠り易い手続きといえます。
特に、個人や法人が、弁理士を使わず、自分で直接手続きを行っている場合には…。
では、住所変更の届け出を怠ると、
具体的に、どういった問題が生じるのか。
今日はその点について書きたいと思います。
まずは、特許庁で最近撮影した下記の画像をご覧ください。公示送達です。
クリックすると拡大表示されます。
(個人情報に係る部分にはモザイクを施しています。)
少し見難いのですが、
・登録査定の謄本や、
・拒絶査定不服審判の審決書謄本
・商標の取消審判の審判請求書副本
などの超重要書類が、
特許庁の掲示場で『公示送達』されていることがわかります。
『公示送達』とは、要するに、
申請人宛ての書留等が宛先不明で特許庁に戻って来た場合に、
官報に掲載するとともに特許庁の掲示場に掲示することで、
申請人に送達されたものとみなす制度です。
正確には、
官報に掲載した日から20日を経過した時点で、
相手方に届いたものとみなされます。
当然ですが、このような公示送達が行われたからといって、
送達を受けるべき当事者が、この公示送達の事実を知ることはなかなか難しいといえます。
ですから、上の画像の事例でいえば、
・せっかく商標登録の許可が下りたのに、その事実を知ることができないため、最後の登録手続きを行うことができず、
・高い印紙代を払って拒絶査定不服審判まで行ったのに、特許の登録可否の結論を知ることができず、
・知らない間に、大事な商標権が取り消されてしまうかもしれない、
といった不利益を被ることになります。
したがって、(特に特許庁に対して直接手続きを行っている個人や法人に言えることですが)
・特許権や商標権などの権利を既に持っている方や、
・特許庁に対して権利取得の手続きを現に行っている方は、
自己の住所に変更があった場合には、
速やかにその事実を届ける必要があります。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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