弁理士の富田です。
さて、今日は、特許出願の図面にミッキーマウスなどの著名キャラクターを描いた場合の取り扱いについて解説したいと思います。
特許というのは、技術的なアイデアを保護する制度ですから、本来、特許制度と著名キャラクターとは関連性がないわけですが、
特許出願の図面に、商品形態や絵柄の一例として、キャラクターを引用する出願人が(極少数ですが)存在するわけです。
例えば、特許出願の図面にミッキーマウスの絵を描いた場合、どのように取り扱われるでしょうか。
下記の特許出願(公開特許公報)では、ミッキーマウスが登場しています。
まず、この特許出願の請求項7には、ウォルトディズニーのキャラクターが登場し、また、
請求項8には、ハローキティーが登場します。
ディズニーキャラクターやハローキティーといった文言が、特許権を特定する用語として登場することには、
強い違和感を感じますが、「登録商標」との表示も併記されているので、書くこと自体は特に問題ないといえるでしょう。
(ただし実効性のある特許権を取得するという意味では問題があると考えられます。)
次に、この特許出願の図面において、
図1や図2(a)には、もともとミッキーマウスの絵が描かれていたようですが、
特許庁が発行した公開公報ではミッキーの絵が見事に削除されています。
なお、図2(b)には、ミッキーマウスらしきキャラクターが描かれていますが、コチラはお情けで削除を免れたようです。
このように著名キャラクターが特許庁によって削除されてしまった理由としては、
著名キャラクターの無断引用が公序良俗に反すると判断されたためと思われます。
また、著名キャラクターが無断で描かれた特許公報を発行すると、著作権侵害の問題が生じる可能性もあるため、
こういった問題を回避したものと思われます。
このように、特許庁は自らの判断で、特許公報に掲載する特許出願の内容を独断で削除できるので、
ミッキーマウスやハローキティーといった著名キャラクターのほか、個性的デザインの情報機器などを、特許出願の図面にそのまま描くことは避けるのが得策であるといえます。
もっとも、仮に削除されたとしても、申請書類そのものから削除されるわけではなく、
特許公報には掲載しないということだけですから、削除による権利内容への影響は無いといえます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
-
■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
【富田弁理士への問い合わせ先】
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-16-9 双葉ビル5F
富田国際特許事務所
TEL:03-6205-4272 FAX: 03-3508-2095
※ 富田弁理士へのEMAILはコチラのメールフォームよりお願いいたします。
最近投稿した記事
- 2024-03-08特許「学習済みモデル」について特許申請する場合に留意すべき明確性要件
- 2024-03-07弁理士 富田款AI技術関連の特許出願におけるサポート要件の理解
- 2024-03-06特許AI技術を活用したレーザ加工装置の特許事例について
- 2024-03-01商標「デコピンくん」商標出願の波紋