弁理士の富田です。
さて、前回の記事までの記事では(その1、その2)、
『特許請求の範囲に新規事項を追加する補正』の問題点等について説明してきました。
今日は、最後の拒絶理由通知において、特許請求の範囲に対し『新規事項追加の拒絶理由』(いわゆる17条の2の拒絶理由)を指摘された場合の対応について書きたいと思います。
前回の記事では、上記のような状況で『新規事項追加の拒絶理由』を指摘された場合、その解消が難しくなると説明しました。
では、万が一これに該当することとなった場合、具体的にどのようにして権利化を目指せばよいのでしょうか。
審査官への面接審査(又は電話での面接)の申し入れ
前回の記事で書いたとおり、
特許請求の範囲についての『新規事項追加の拒絶理由』を解消するような補正は、
最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正要件(特許法17条の2第5項)を満たしません。
したがって対応(拒絶理由の解消)が困難となります。
しかしながら、実務上は『最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正要件』は必ずしも厳格に適用されてはおらず、
審査官によっては、この要件を満たさない補正を許容する場合もあります。
したがって、特許請求の範囲に対する『新規事項追加の拒絶理由』を解消するような補正(削除等)を行う場合には、
審査官への面接審査(又は電話での面接)を申し入れて、
拒絶理由が解消されるか否かについて事前に見解をうかがうのが得策といえます。
分割出願(特許法44条)
上記面接審査の申し入れによっても、
特許請求の範囲についての『新規事項追加の拒絶理由』を解消するような補正が許容されない場合は、
残された道は分割出願(特許法44条)になります。
分割出願は、特許出願の一部を抜き出して、当該一部について新たに特許出願する手続きです。
もとの出願時に遡ることができるなどのメリットがある一方で、
出願印紙代や審査請求の印紙代があらためて必要になるなどの金銭的デメリットが生じる点に留意する必要があります。
最大のメリットとしては、この分割出願の手続きを行うことで、
拒絶理由がリセットされ、抜き出した発明について新ためて審査を受けることができることが挙げられます。
本日もお読みいただいて有難うございました。
虎ノ門 富田国際特許事務所
Author Profile
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■ 1997年より国際弁理士事務所にて、主に、米国・欧州・日本における知的財産権業務に従事。
■ 国内および外国のオフィシャル・アクションへの対応、外国法律事務所へのインストラクションなどを担当。また、米国やドイツのクライアントからの日本向け特許出願の権利化業務を担当。特許の権利化業務のほか、特許権侵害訴訟や特許無効審判、特許異議申立、口頭審理対応、侵害鑑定の業務も担当。訴訟業務では、特許権侵害訴訟のほか、特許無効審判の審決取り消し訴訟を経験。
【所属団体】 日本弁理士会,日弁連 法務研究財団
【専門分野】 特許、商標、意匠、不正競争防止法、侵害訴訟など
【技術分野】 機械、制御、IoT関連、メカトロニクス、金属材料、金属加工、建築土木技術、コンピュータ、ソフトウェア、プラント、歯科医療機器、インプラント、プロダクトデザイン、ビジネスモデル特許など。
【その他の活動】
■ 2013.09.17 セミナー講師: 東京メトロポリタン・ビジネス倶楽部 「職務発明の取り扱い」
■ 2014.04.19 テレビ出演: テレビ朝日 「みんなの疑問 ニュースなぜ太郎」
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